予防について

動物の寿命は人間よりも短いものです。その限られた時間をいつまでも健康で元気に過ごさせてあげられるよう、当院では予防医療に力を入れています。

病気にかかると動物に負担がかかるだけではなく、飼い主様の精神的なショックも多大なものとなります。お互い幸せに過ごすために、以下に代表的な予防項目をご紹介いたします。

主な健康診断の内容

わんちゃんの各種予防一覧

混合ワクチン
年1回注射で予防
狂犬病ワクチン
年1回注射で予防
フィラリア症
4月から12月まで月1回予防
錠剤タイプ、ジャーキーみたいな味付けタイプ、付け薬タイプあり
ノミ・ダニ予防 月1回予防
ジャーキーみたいな味付けタイプ、付け薬タイプあり
内部寄生虫駆除(おなかの中の寄生虫)
年1-2回以上
錠剤タイプ、ジャーキータイプあり
健康診断
検査内容は年齢・病歴に応じて変わります
避妊・去勢手術

ねこちゃんの各種予防一覧

混合ワクチン
年1回注射で予防
フィラリア症
4月から12月まで月1回予防 付け薬タイプ
ノミ・ダニ予防 月1回予防
月1回予防 付け薬タイプ
内部寄生虫駆除(おなかの中の寄生虫)
年1-2回以上
錠剤タイプ、付け薬タイプあり
健康診断
年1回
検査内容は年齢・病歴に応じて変わります
避妊・去勢手術

犬の主な伝染病

・犬パルボウイルス感染症
・犬ジステンバー
・犬伝染性肝炎
・犬アデノウイルス2型感染症
・犬パラインフルエンザウイルス感染症
・犬レプトスピラ病 黄疸出血型
・犬レプトスピラ病 カニコーラ型
・犬コロナウイルス感染症
複数の病気を予防するワクチンで、年に1回の接種を推奨しています。特に母親から譲り受けた抗体が低下する生後2~3ヶ月の時期は危険が伴いますので生まれたばかりの仔犬を飼われている方は極力接種していただければと考えております。

混合ワクチンにはいくつか種類がございますので、どの種類のワクチンを受けるかなどはお気軽にご相談下さい。
わんちゃんやねこちゃんの間で伝染する、ウイルスや細菌が原因となる感染症を何種類かまとめて予防するためのワクチンです。年に1回接種することでしっかりとした免疫を保つことができます。日本では欧米に比べて混合ワクチンを接種している動物の比率が大幅に低いため、感染症に触れてしまう機会がとても高くなっています。外出する機会のあまりない子でも忘れずに予防してあげましょう。

狂犬病ワクチン接種

今はまだ日本国内では症例は報告されていませんが、近隣諸国では年間で約10万人の方が狂犬病で命を落としていると言われています。感染すると致死率100%、治療法のない病気のため、日本でも年に一度の接種が法律によって義務付けられています。

大切な愛犬の命を守るとともに、一緒に住む家族を守るためにも忘れずに接種しましょう。

貨物の流通や人の行き来が激しくなっている現代、日本に狂犬病が侵入するリスクはけして低くありません。きちんとワクチン接種を行い、国内でウイルスが伝染しにくい環境を作っておくことはとても大切なことです。

フィラリア予防接種

蚊を媒介して動物の心臓に寄生し、重篤な状態に陥る危険な病気です。
一般的に蚊の活動が活発になる前の時期から予防接種を行っております。皮膚にたらすタイプや錠剤など犬種や状態に合わせて様々な予防薬がございますので詳しくはご相談ください。

フィラリアはそうめんのように細長い線虫という虫の一種です。子虫のころはとても小さく、顕微鏡でなくては見ることができませんが、成虫は30センチメートルにも成長します。フィラリアに感染したわんちゃんの血液にはたくさんのフィラリアの子虫が含まれています。この血液を吸った蚊の体内にフィラリア子虫が取り込まれ、その後再び蚊が吸血するときに別のわんちゃんの体内へと侵入していくのです。侵入したフィラリアは脱皮を繰り返しながら、3~5ヶ月で心臓や肺動脈に寄生するようになり、ここでたくさんの子虫を産むようになります。心臓にフィラリアが寄生すると心臓の働きが衰えるほか、肝臓や腎機能にも支障をきたし、放っておくと命に関わるこわい病気です。また、ねこちゃんにも感染することが知られていますので、予防をしておくと安心です。

ノミやダニなどの寄生虫予防

ノミやダニが寄生して血を吸われることによって、皮膚炎やアレルギーを引き起こしたり、寄生虫の体内への侵入を誘導してしまう事があります。
当院では皮膚にたらすタイプと内服薬をご用意しております。
ノミは体長2ミリの小さな昆虫ですが、驚異的な繁殖力を持ち、暖かい室内を最も好みます。部屋の隅や家具の下、絨毯、ソファーやベッドの上などに棲息し、冬の間も室温が13度を超えると活発に寄生と繁殖を繰り返します。ノミがたくさん寄生すると貧血を起こすこともあります。一方で、ノミがみつけられないくらい少数寄生するだけでも、アレルギー性皮膚炎を起こすことがあります。アレルギーは強い痒みや脱毛の原因となったり、引っ掻いた傷から化膿性皮膚炎を起こします。また、ノミにより瓜実条虫(サナダムシ)という寄生虫が運ばれ、おなかの中に寄生します。
ノミは人を刺しますし、ノミが運ぶ猫ひっかき病に感染したねこちゃんに引っかかれたり咬まれたりすると人が感染しリンパ節が腫れて発熱や頭痛を起こすことがあります。
やぶや草むらに棲息するマダニは草の先端で待ちかまえており、動物や人が近くを通るときをねらって寄生します。当院のある江戸川区の公園や河原などもマダニの棲息地帯。少しでも緑の多い場所に近づくときは注意が必要です。マダニは皮膚にかみついて吸血するためたくさん寄生すると貧血を起こすほかに、少数の寄生でも、数多くの病気を媒介することで知られています。わんちゃんの病気で特に恐ろしいのは犬バベシア症です。バベシア原虫が赤血球に寄生して破壊。貧血、発熱、黄疸、食欲不振などがみられ、急性の場合死に至ることもあります。人間に対しても、死に至る恐ろしい病気を運ぶことがあり、SFTS(重症熱性血小板減少症候群)という病気や日本紅斑熱が知られています。

去勢・避妊手術

大事な家族の手術ですから、やはりよく情報を集め、しっかり検討したいですよね。
そこで、ここでは避妊・去勢の手術を行うことについて利点・欠点を挙げておきます。
まず利点からご説明します。

【わんちゃん、女の子の場合】

女の子のわんちゃんは比較的高い確率で乳腺腫瘍が発生することが知られています。
避妊手術をしていない子での発生率は実に4~5 頭に1 頭。その約半数が悪性腫瘍、いわゆるガンということになります。もし、発情を繰り返す前の早い時期に避妊手術をしておくと、この確率を10,000~5,000 頭に1 頭まで減らしてあげることができます。
次に子宮、卵巣そのものに発生する病気も比較的多く診られます。なかでも子宮蓄膿症という子宮が細菌感染を起こしてしまう病気は緊急手術が必要で、なかには急性の腹膜炎から命を落とすケースも見られます。とくに高齢になってから発症すると既に他の臓器の機
能も低下しているので非常にリスクが高い病気といえます。
他にも、発情中は体調が悪くなり、胃腸炎や膀胱炎を起こしやすかったり、食欲元気がなくなったりすることも多いようです。陰部からの出血で、皮膚炎になってしまう子もいます。
また、お散歩中に男の子にしつこく追いかけられて、すっかりお散歩嫌いになってしまったというお話も伺います。避妊手術をすることで、こういった女の子特有の不快を感じなくて済むので、のびのびと楽しく生活することができるようです。

【わんちゃん、男の子の場合】

男の子のわんちゃんでは、ホルモンの影響で高齢になってから前立腺肥大や肛門周囲腺腫、会陰ヘルニアという病気の発生が多く見られます。また、精巣自体に腫瘍が発生することもあります。手術が必要になることもあり、特に高齢になってから発症すると他の内臓の機能も低下しているので手術自体のリスクも高くなってしまいます。病気の予防以外では、男の子特有の問題行動の抑制効果があります。男の子は成長に伴い、群れ、つまり家族の中での地位を上げようと家族のいうことを聞かなくなったり咬んだりするようになります。また、群れを外敵(お客様や散歩中に見かけるよその人)から守るためにやたらと吠えたり攻撃するようになります。これらは成長したオスとしては当たり前の行動といえますが、家庭の中、人間社会の中で生活する場合にはトラブルの元となってしまいます。また、強いリーダーでいなくてはいけない、群れを守らなくてはいけないと意識し続けるのは案外ストレスの多いものです。比較的若い時期に去勢手術をしてあげると、わんちゃんは安心して家族に甘えることができ、愛らしい明るい性格を維持しやすいようです。

【ねこちゃん女の子の場合】

女の子のねこちゃんは生後約半年で性成熟を迎えます。発情を迎えたねこちゃんはオスを求めて昼夜問わずにゃーにゃーととても大きな声で叫び続けます。この間は食欲も落ち、そわそわと落ち着かない様子で、外に逃げたがったりもします。交尾をしない限りこの発
情が続きますので、何日かして少しおとなしくなったかなと思うとまた次の日から叫び続ける、ということが続きます。鳴き声で飼い主様も眠れない、ねこちゃんも落ち着かなくてつらい、このような状況は避妊の手術をしてあげれば避けられます。また、卵巣嚢腫や
子宮蓄膿症といった生殖器病の心配がなくなります。高齢になって重い病気を発症してから緊急手術が必要となるケースでは他の内臓機能も低下しているため、非常に高いリスクを背負うことになってしまいます。

【ねこちゃん男の子の場合】

手術で精巣を摘出するため、精巣に発生する腫瘍(ガンなど)の心配がなくなることはもちろんですが、その他に男の子のねこちゃんは自分のなわばりを主張するためにスプレー行動をします。これはお尻を高く上げてなるべく高く広い範囲におしっこを吹きかける行動で
す。これをソファ、ベッド、布団、壁、たんすの上、押入の中などあちこちにします。においを付ける行動なので、きれいに掃除してもすぐに再びにおいをつけなおします。これは成長したオスにはどうしても必要な行動ですので、叱っても治るどころか飼い主様との信頼関係を損ねてしまう結果になります。また、近所に発情した女の子がいれば、落ち着かなくなり、食餌ものどを通らず、脱走を試みるようになり、強いストレスを感じざるを得なくなります。比較的若い時期に去勢をしてあげると、このような男の子特有のストレスから解放されますので、ねこちゃんは安心して飼い主様に甘えることができ、愛らしい明るい性格を維持しやすいようです。


では、避妊、去勢手術の欠点についてお話しします。

まず、手術は全身麻酔でおこなわれ、女の子では子宮と卵巣、男の子では精巣を摘出します。慎重に全身の状態をモニターし、最善の手術を行いますがアレルギーや特異体質(麻酔薬による急性循環不全・呼吸不全等による死亡)は麻酔前に予測することができません。ただし、若くて健康な状態での手術は、高齢で何らかの病気を発症してからの手術に比べると格段にリスクも低く、術後の回復も早いことはいうまでもありません。
次に、精巣や卵巣を摘出してしまうと、再び子どもを産ませることは不可能になりますのでこの点はご注意下さい。最後に避妊・去勢の手術を行うと食欲も増し、やや太りやすくなる傾向にあるようです。この場合はフードを低カロリーなものに切り替えたり、運動の機会を増やしてコントロールする必要があります。

いかがでしたか。この情報を参考に、ご家族様でよくお話し合いをされることをお勧め致します。また、手術前後の具体的なスケジュールなどについては直接スタッフにお尋ね下さい。